吉野山と役行者・役小角
吉野山と役行者・役小角
役行者・役小角は山上ヶ岳に深く分け入り、一千日間の参籠修行を行っていると蔵王権現を感得し、衆生を救う為に桜の木に刻み、山上ヶ岳と吉野山に祀りました。桜は蔵王権現の御神木とされ、金峯山寺に参詣した際に桜を献木することが風習になりました。
【吉野山桜見ごろ(例年時期)・2025年開花満開予想】
吉野山の桜見ごろは例年4月上旬頃から4月中旬頃です。ただ桜の開花状況や見ごろ(満開)はその年の気候などによって多少前後することがあります。なお2025年1月下旬頃から奈良の桜開花・桜満開・桜見ごろ情報を発信します。
吉野山桜見ごろ
【吉野山 歴史・簡単概要】
吉野山は奈良県中央部を流れる吉野川(紀の川)南岸から大峰山脈に続く約8キロメートルの山稜です。吉野山では修験道の祖である役行者・役小角が修行中に感得した蔵王権現を桜の木に自ら刻み、桜が蔵王権現の神木とされ、蔵王権現に祈願する際に桜の苗木を寄進することが風習になりました。現在、吉野山には白山桜(シロヤマザクラ)など約200種・約3万本の桜の木が植えられています。
【吉野山と役行者・役小角】
吉野山が奈良だけでなく、日本を代表する桜名所になったことに修験道(しゅげんどう)の祖である役行者(えんのぎょうじゃ)・役小角(えんのおづの)が深く関係しています。吉野山はかつて山々に神が宿り、神仙の住む理想郷とされ、今から1,300年以上前の飛鳥時代に役行者・役小角が日本各地の霊山を開山した後に熊野から大峯山脈(おおみねさんみゃく)の稜線伝いに吉野山に入り、33度に渡って修行しました。そして最後に標高約1,719.2メートルの山上ヶ岳(さんじょうがたけ)に深く分け入り、一千日間の参籠修行を行っていると憤怒(ふんど)の蔵王権現(ざおうごんげん)を感得し、濁世の衆生を救う為に桜の木に刻み、山上ヶ岳(大峰山寺(おおみねさんじ))と吉野山(金峯山寺(きんぷせんじ))に祀りました。役行者・役小角は濁世に苦しむ衆生を救う本尊を賜りたいと願うと釈迦如来(しゃかにょらい)・千手千眼観世音菩薩(せんじゅせんがんかんぜおんぼさつ)・弥勒菩薩(みろくぼさつ)の三仏が現れたが、三仏の柔和な姿では荒ぶる衆生を救うことができないと思って、更に祈念すると天地鳴動し、山上の大盤石が割れ、雷鳴とともに悪魔を降伏し、強い力で導く、忿怒の形相荒々しい蔵王権現(金剛蔵王大権現)が現れたと言われています。蔵王権現は釈迦如来・千手千眼観世音菩薩・弥勒菩薩の三仏が柔和な姿を捨てて、忿怒の形相荒々しい姿になって現れたものでした。その後役行者・役小角の神秘的な伝承や修験道が盛んになると桜の木を使って刻まれた蔵王権現の御神木が桜とされ、金峯山寺に参詣した際に桜の苗木を献木することが風習になり、平安時代頃から桜の木がたくさん植えられるようになりました。そしてその桜などに惹かれ、多くの文人墨客などが訪れるようになり、西行法師(さいぎょうほうし)が吉野に庵を結んだり、関白・豊臣秀吉(とよとみひでよし)などがお花見に訪れたりしました。なお吉野には宇多天皇・白河上皇・鳥羽上皇・後白河上皇・後鳥羽上皇・藤原道兼・藤原道長・後二条師通など天皇・貴族などが訪れました。
【役行者・役小角】
役行者・役小角(役行者神変大菩薩・役行者神變大菩薩)は634年(舒明天皇6年)に出雲出身の父・大角と母・白専女との間に賀茂一族(高賀茂朝臣)として生まれたとも言われています。大和国葛城上郡茅原(奈良県御所市茅原)の誕生地には本山修験宗の吉祥草寺が創建されています。650年(白雉元年)に山背国に志明院を創建し、翌651年(白雉2年)に奈良・元興寺で孔雀明王の呪法を学びました。20代の頃に藤原氏の始祖・藤原鎌足の病気を治癒させたという伝説があります。32歳の時に葛城山に登って孔雀明王像を岩窟に安置して修行し、持呪観法して不思議の験術を得たとも言われています。その後も熊野・大峰で山岳修行を続け、吉野・金峯山で金剛蔵王大権現を感得し、日本古来の山岳信仰や山修行と外来の密教(仏教)などを融合させた修験道の基礎を築きました。しかし弟子・韓国連広足が師・役行者の能力を妬み、鬼神を使役とした妖術を使って人を惑わしていると朝廷に讒訴したことから699年(文武3年)に伊豆島に流罪になりました。毎晩海上を歩いて富士山に登っていったとも言われています。その後701年(大宝元年)1月に大赦となって故郷・御所市茅原に戻り、同年6月7日に大阪箕面・天上ヶ岳で亡くなったと言われています。
【蔵王権現】
蔵王権現は正式には金剛蔵王権現・金剛蔵王菩薩とも言われています。「金剛蔵王」には究極不滅の真理を体現し、あらゆるものを司る王という意味があります。蔵王権現はインド仏教に起源を持たず、日本独自の山岳仏教である修験道の本尊とされています。蔵王権現は修験道の開祖とされる役行者・役小角が金峯山で修行中に示現したと言われ、役行者・役小角が創建したと言われる金峯山寺・大峰山寺の本尊として祀られています。蔵王権現は釈迦如来・千手観音・弥勒菩薩の三尊の合体したものともされています。また蔵王権現は大己貴命・少彦名命・国常立尊・日本武尊・金山毘古命などとも習合しています。更に神仏習合では第27代・安閑天皇と同一の神格とされました。なお一般的に蔵王権現の像容は密教の明王に似ており、忿怒相で、怒髪天を衝き、右手と右脚を高く上げ、左手は腰に当てています。
【吉野山と役行者・役小角 備考】
*奈良には多くの桜名所があり、その桜見ごろを下記リンクから確認できます。
奈良桜見ごろ2025